『三頭の蝶の道』 山田詠美 26-101-3860
三人の女流作家と編集者の物語なのだけど、この「女流」というところがポイントなのでしょう。俳優だったら、男優・女優という呼び方はされてきたけど(これも、最近は俳優で統一されつつある)、作家の場合「男流作家」と呼ばれることはありません。
かつては作家とは男の仕事であり、女の作家は下に見られていたからこその「女流」なのです。とはいえ、それなりに評価されるようになった女流作家三人(河合理智子、森羅万里、高柳るり子)がいました。
その中の一人、河合理智子の葬儀から物語が始まります。
えっ、いつまで女の小説家が女流作家と呼ばれてたかって?
それに山下路美は答えました「たぶん、わたしが最年少で女流小説大賞を受賞した辺りまでじゃない?」
この山下路美こそが著者の山田詠美らしいのです。
相手と切磋琢磨するための前向きのエネルギーにする人もいれば、気に入らない人を引きずり降ろそうとすることに無駄な力を使ってしまう人もいる
「あの人よりわたしの方が上!」ってマウントしたくなるとか、「どうして、あの人の本の方が売れてるの?」とか、「あんな若造に」とか、他人から見ればバカバカしいことなんだけど、それが許せないって気持ちがあるからこそ、小説を書くパワーになるのかなぁ。そういう得体のしれない感情を持ち続けることができるってことが才能なのかもしれません。
でも、家族とか、担当編集者とか、そういう人の近くにいる人はたいへんです。その毒気が嫌で逃げ出す人もいるのもよくわかります。でも、そういう嫌な部分も含めて「この人と共に生きたい」と思う人もいるのです。
中条佳代は、森羅万里のために50年近くも伴走し続けてきたと言っていたけど、そこまで尽くしてくれる人がいたからこそ、森羅は長生きできたし、文章を書きつづけられたんだろうなぁ。たぶん、この人は瀬戸内寂聴がモデルなんだけど、良くも悪くも人を惹きつける力が強い人なんだったのでしょう。
この作品は、瀬戸内寂聴の「いのち」を読んで、ちょっと待った~と、著者の山田詠美は思ったから書いたらしいのです。つまり、「いのち」を読んでみなくては、ということですね。
第一章 2015
第二章 2007
第三章 2023
エピローグ
3860冊目(今年101冊目)
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