『めぐる糸 明治浪漫霊異譚』 永井紗耶子 26-140-3899
帝大生・斎木啓吾には秘密がありました。彼には、普通の人には見えない「霊」が見えてしまうのです。自分に見えているものが、自分にしか見えないのかどうかなんて、瞬間に判断することはできません。時には会話できることもあります。そんな彼の姿を知らない人に見られてしまったら、啓吾自身が頭のおかしい人、怪しい人だと思われるかもしれません。
彼の母親にも同じような能力があるようで、それは他の人には見えないものだから、黙っているようにと言われて育ちました。
ずっと秘密にしてきたのに、心霊研究者を名乗る子爵家の若様・連翹寺正周(れんぎょうじまさちか)に知られてしまったのです。そして、彼の研究に力を貸して欲しいとまで言われます。でも、啓吾はちっとも嬉しくないのです。
この物語と同時期のロンドンで暮らしていたコナン・ドイルも心霊主義に深く傾倒していたということが知られています。ロンドン帰りの正周は、その影響も受けていたのかもしれません。
時は明治39年(1896年)。文明開化によって、日本は様々なことが変わりました。西洋諸国に肩を並べるために西洋風の建物が建ち、洋服を着る人が増え、自動車や廃仏毀釈が行われました。霊とか怨霊とかが軽んじられるような時代になっていましたが、正周は、だからこそ心霊研究が大事だと考えています。その研究のために啓吾の能力が絶対に必要だと感じたのでしょう。
第一話 ロマン髑髏
第二話 祈り猫
第三話 笑う写真
第四話 霧箱の糸
第五話 生きていた令嬢
終 めぐる糸
啓吾は、そんなことを望んでいるわけでもないのに、霊に関わる事件に巻き込まれていきます。そして、霊が見えない正周だけど、彼にも不思議な力(祓う力)があるようなのです。
啓吾は新聞社でアルバイトをしています。アルバイト(ドイツ語)という言葉はこの頃から使われ出したようです。啓吾が書く「奇事片々」という記事が人気を博すようになっていくのですが、自分の創作ではなく、自分の体験をそのまま書いてるだけなのになぁと思うところが、啓吾の面白いところなのかもしれません。
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