『NHKラジオ深夜便 絶望名言 1』 頭木弘樹 26-152-3911
この本のことを知ったのはNHKの「ドキュメント20min.」でした。「ラジオ深夜便」という番組の人気コーナー「絶望名言」のことが紹介されていて、その中で紹介されたこの言葉に打ちのめされてしまいました。
将来にむかって歩くことは、ぼくにはできません。
将来にむかってつまづくこと、これはできます。
いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。(フェリーツェへの手紙 カフカ)
この本の著者である頭木さんは、難病で入院中にこの言葉と出会ったのだそうです。ずっとベットに寝ている生活を送っていた彼にとって、「いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。」という言葉に、「ぼくもそうだ」と共感を覚えたのだそうです。
普通は、暗い言葉なんか聞くと、一緒に落ち込んでしまうみたいなことになりやすいと思うんです。でも、カフカの場合、絶望すぎるというか、もう突き抜けてしまっているので、一緒に落ち込むというよりは、むしろ救いになるんですね。
ドストエフスキーも元気な時には読むことができなかったけど、入院中にはすんなりと読めたのだそうです。病院の同室のみなさんに紹介したら、みんな読むようになって、6人部屋の全員がドストエフスキーを読んでいて看護師さんがビックリしたこともあったそうです。
世間では、ポジティブでいることが素晴らしいことだとされ、「信じ続ければ、その通りになる」とか「あきらめちゃいけない」とか前向きな言葉が溢れています。病気などで入院していても、そういう言葉をかけてくる人が多いですよね。でも、そんな言葉に違和感を感じることってありませんか。
弱っている時に「ステーキを食べてスタミナをつけなさい」みたいなことを言われたって、そんなこと無理なんです。おかゆだって1口か2口しか食べられないときには、「わたしは今弱っているのです。そうっとしておいてくれませんか。」って思うけど、それを言う元気すらないわけです。
その時の体力とか気持ちとかに合った言葉が欲しくなるのは当然なのです。だから、絶望名言が心に沁みるのでしょう。
落ち込んでいる時に明るい音楽よりも暗い音楽の方が聞きやすいというのは、実体験としてよくわかります。この本の中で「絶望音楽」も何曲か紹介されています。その中でさだまさしさんの「療養所(サナトリウム)」「第三病棟」の2曲が紹介されていました。今度聞いてみようと思います。
「絶望名言」で紹介されていた言葉を読んでいると、何だか心が落ち着きます。無理して元気なふりをするより、自分に正直だからなのでしょうか。
太宰治の項で、三島由紀夫が大学生の時に、わざわざ訪ねていって「僕は太宰さんの文学はきらいなんです」と面と向かって言ったら、「そんなことを言ったって、こうして来てるんだから、やっぱり好きなんだよな。なあ、やっぱり好きなんだ」と太宰に言われて三島がすごく怒ったという話があって、笑っちゃいました。
あのナルシストの三島は太宰の正直さが嫌いだけど、それは好きの裏返しだったって見破られてしまったってことですよね。
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