『人間失格』 太宰治 26-159-3918
「太宰治」という作家の名も、「人間失格」という書名も知っていたけれど、なぜか興味がわかなくて、今日まで読むことがなかったのです。ところが先日、「絶望名言」の中で、三島由紀夫が「僕は太宰さんの文学はきらいなんです」と面と向かって言ったら、「そんなことを言ったって、こうして来てるんだから、やっぱり好きなんだよな。なあ、やっぱり好きなんだ」と太宰が言ったというエピソードを読んで、不思議な魅力を感じたのです。
そして、「人間失格」と「桜桃」を読んでみました。
太宰自身がモデルであろう主人公が、軟弱で成り行き任せで、とても迷惑な男なのだけど、それを堂々と「わたしはこんなにダメな人間なのです」と言っているところが、当時の人としてはとても珍しい人だったのだろうと感じました。「男とは強くなくてはいけない」「他人から後ろ指をさされるような人生を歩んではいけない」と教えられてきたけれど、「そんなこと無理だよ」と弱音を吐いてしまう太宰。
父親に気に入られるために、言いたいことも言えない自分。友達に弱みを見せたくないから道化を演じてしまう自分。そんな自分が嫌いだと思いつつも、そんな自分であり続ける努力だけはする自分を「人間失格」とうそぶく太宰。
生まれた家が裕福であったから、努力しなくてもそこそこ勉強ができたから、なぜか女にモテてしまったから、自分は何故こんな人間なのかと問い続けたからこそ、自分は人間失格だと言えたのでしょう。
もし彼が貧しい家の子だったら、あるいは、さほど頭が良くなかったら、自分のことをこんなにも思い悩むこともなかったでしょうに。
そういえば、『「若者の読書離れ」というウソ』の中で、若者が意外と「人間失格」を読んでいると書かれていました。グズグズと「自分なんか」と弱音を吐き続ける太宰は、彼らにとって共感を持てる人なのかもしれません。ポジティブで元気な人なんて、なりたくてもなれないさと思い続ける人は、いつの時代にもいるのですから。
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