『ヒトラーのモデルはアメリカだった』 ジェイムズ・Q・ウィットマン 26-175-3934
ヒトラーのモデルはアメリカだった
Hitler's American model
法システムによる「純血の追求」
ジェイムズ・Q・ウィットマン
James Q. Whitman
西川美樹(にしかわ みき)訳
みすず書房
米国 2017
この本を読んで、まず気がついたのは、わたしが持っていた「アメリカは移民の国である」という認識の誤りでした。1870年に制定された「帰化法」は「自由な白人であるすべての外国人に帰化を認める」というものでした。つまりヨーロッパからの移民(白人)のみが対象です。1924年に成立した移民法では、中国人と日本人を排除の対象としていました。更に黒人に関しては、奴隷として連れてきた有色人種ですから、一般市民になる法律とは無縁だったわけです。
アメリカの「人種隔離法」の黒人の部分をユダヤ人に置き換えた法律をナチスは制定しようとしていました。アメリカの黒人は見た目でほぼ区別することができますが、ドイツのユダヤ人は見た目だけでは分からない場合がかなりあるので、そこの線引きに苦労していたようです。
ジム・クロウ法では、見た目は白くても、1滴でも黒人の血が混じっていたら黒人であるとしていました。さらに「公的ならびに私的な交流のいずれ」も対象となっていた法律を、そのまま拝借するには厳しすぎると、最初ドイツでは考えていたようです。
結局、「ニュルンベルク法」で「ドイツ人とユダヤ人との婚姻、性交渉の禁止、ユダヤ人家庭で45歳未満のドイツ人女性の雇用禁止などを制定し、ユダヤ人の公民権を奪いました。そして、この法律はユダヤ人だけでなく、黒人やロマ(ジプシー)にも適用されています。つまり、現在のドイツ人に他の血が混ざることは許さない「純血化」を目指したのです。
この法律によって、ユダヤ人はドイツ人(アーリア人)よりも劣る人種であり、決して交わってはいけないのだとしたのですが、それだけでは済みませんでした。なぜなら、ユダヤ人は会社や工場を経営し、豊かな人が多くいたからです。彼らの財産を没収し、更には強制収容所へ送って、ユダヤ民族自体を絶やそうという方向へナチスは進んでいったのです。
ナチスがアメリカの法律を参考にしたなんて、とんでもない話だという人もいます。そういう都合の悪い話を信じたくないと思う人はきっといるでしょう。でも、アメリカの人種差別が全然なくなっていないのは何故なのかしら。ジム・クロウ(人種隔離)法は1964年の公民権法の成立によって廃止されて、それから半世紀以上たっているのに、Black Lives Matter と叫ばなければいけない社会が続いているのは何故なのかって、考えたことがあるのでしょうか。
日本だって明文化されていないだけで、同じようなことをやってきました。半世紀前には、在日の人たちが日本企業に就職するのは困難でした。(ソフトバンクの孫社長は、東大を卒業しても一般企業に就職できないことが分かっていたから、起業したんでしたよね)外国籍の人が公務員になれるようになったのも、割と最近のことです。結婚を国籍が理由で反対された人も多くいました。
法律とは、みんなを守るために制定されるべきものなのに、その逆の理由の法律があって、人々を苦しめるなんてことがあってはならないとわたしは考えます。
人間は間違いを犯すものです。だから、過去の間違いをきちんと認め、正しい方向へ進むよう努力すべきだと思うのですが、そうは思わない人がけっこういることに、参ったなぁと思うことが増えた今日この頃です。
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