『そっと 静かに』 ハン・ガン 26-199-3958
ハン・ガンさんの文章を読んだことはあったけれど、彼女が作詞・作曲してCDを出していたなんて知りませんでした。彼女にとって文章を書くのも、音楽を作るのも同じ感覚なのかもしれません。
彼女が小さかった頃、ピアノを習いたかったけれど、家が貧しくてそんなことはとても言い出せず、紙の鍵盤で練習をしていたという文章を読んでいて、わたしが小さかった頃のことを思い出しました。
その頃、オルガンを習いに行ってはいるけれど、家に楽器がなくて紙の鍵盤で練習していた子がいたという話を聞いたことがありました。指の運びを覚えることはできても、音が出ない鍵盤で本当に練習ができるのかなと思っていました。だから、ハン・ガンさんのように、熱意のある人ならできるのだと、長年の疑問が解けました。
わたしは、小さかった頃バレエを習いたかったのです。でもその頃、近所にバレエ教室などなくて、誰に相談することもできずにいました。バレエのマンガを見ながら、足を揃えて立つ姿を真似したりしていました。それから何十年も経ってから、母に「子どもの頃にバレエを習いたかったけど、そんなこと言い出せなかったんだ」と話したことがあります。でも、その気持ちはちっともわかってもらえなくて、切なかった。
ハン・ガンさんは、音楽からヒントを得て文章が書けることがあるとおっしゃいます。音楽から様々なことを思い出したり、思わず一緒にくちずさんだり。音楽は不思議です。ワクワクしたり、悲しくなったり、景色が見えてきたり、何十年も歌っていなかったのにちゃんと歌えたり。
音楽と記憶がつながっているなと思うことが度々あります。そういう記憶はこれからも増えていくのでしょうか。だとしたら、楽しい記憶が増えると良いのですが。
「子育て中だからって残り物ばかり食べたり、疲れているのに窮屈な格好で寝たりしてはいけませんよ。引け目を感じることなく食べて、手足を伸ばして寝なさい。妻を見ていて思いました。そうやって生きてきた結果、痛かったり具合の悪かったりするところがどれほど多いことか・・・。一度きりの人生じゃないですか」
ハン・ガンさんがタクシーの運転手さんから言われた、この言葉にハッとしました。自分をいい加減に扱っていると、そのツケが自分を苦しめるのですね。自分をもっと大事にしないといけません。食べたいものも、やりたいことも、我慢していると、後で後悔することになると、肝に命じました。
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