『すごい長崎 日本を創った「辺境」の秘密』 下妻みどり 26-230-3989
長崎の歴史を語るとき、切支丹(きりしたん)の話が、至るところに登場します。1550年にフランシスコ・ザビエルが平戸に上陸し、布教を始め、キリスト教信者が増えました。1582年には、ローマへ天正遣欧少年使節が派遣されました。ところが17世紀以降、キリスト教は禁止され、1957年の二十六聖人殉教事件など、多くの人が処刑されました。
長崎の出島には、多くのポルトガル人が住んでいましたが、彼らはカソリックであることから鎖国政策が決まった時点で追放されました。その代わりにやって来たのがオランダ人です。彼らがカソリックのように布教を第一とせず、商業を主目的とするプロテスタントだったので、滞在を許されたのです。
貿易のためにやってくる外国人のおかげで、町にお金が落ちるようになりました。丸山遊郭が盛況だったのもそのためです。
明治時代になり、長崎はこれまで以上に、世界への窓口であり続けました。上海をはじめ、東南アジア、ロシアへの航路もでき、上海、ウラジオストクまで海底通信ケーブルが敷かれていました。
倉場富三郎(トーマス・ブレーク・グラバーの長男)の会社が始めたトロール船による漁で、漁業も盛んになり、町は賑わいます。スプリンクラー設備のある大きな芝居小屋もあったそうです。
そんな隆盛を極めた長崎も、第二次世界大戦によって大きく変わりました。三菱重工長崎造船所を中心とした、いくつもの造船所、兵器製作所、その関連施設がひしめき合う町になりました。そして1945年8月9日、アメリカ軍が長崎にプルトニウム原子爆弾「ファットマン」を投下しました。投下目標地は三菱重工長崎造船所だったそうです。
終戦後は鍋釜や小さな漁船を作っていた三菱重工長崎造船所は、世界的なタンカーブームによって持ち直しました。水産業も復興し、再び長崎に人が増えました。好景気で専属バンドが出演するようなグランドキャバレーがいくつもできました。そこから全国デビューをしたのが「内山田洋とクールファイブ」だそうです。
先日亡くなった美輪明宏さんは、長崎で生まれ育ったことに誇りを持ち、戦争がいかにくだらないことなのかを力説されていました。
江戸からは遠く離れているけれど、外国からの大きな船もつけられる港を作ることができた長崎。出島という限られた場所ではあるけれど、常に外国人がいて、外国の最新技術や医学などを、ここで知ることができたのです。
長崎がずっと外国への窓口であったことが、そこに住む人たちの考え方を作り上げてきたこと。幕府や政府が勝手に決めてしまうことに対して、静かに抵抗し続け、独自の文化を作って来た長崎は、実に「すごい」ということがよくわかりました。
〇この本で紹介されていた本
・「奉教人の死」芥川龍之介
・「沈黙」遠藤周作
・「シーボルトの眼」ねじめ正一
・「朝星夜星」朝井まかて
・「お菊さん」ピエル・ロチ
・「遠い山なみの光」カズオ・イシグロ
・「かすてぃら」さだまさし
・「ペコロスの母に会いにいく」岡野雄一
わたしが知りたいと思っていた、遊女たちが大陸へ渡った話が少しだけ書かれていました。
「さまざまな国へとつながる長崎には、女性たちを”輸出”する口利き屋のような”貿易商”も跋扈していた。」
3989冊目(今年230冊目)
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