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『ゾルゲの見た日本』 リヒャルト・ゾルゲ 26-242-4001

Sorge

ゾルゲの見た日本

リヒャルト・ゾルゲ
Richard Sorge

みすず書房

 「ゾルゲ事件」という言葉だけは知っていても、実際に彼が何をしていたのかは全く分かっていなかったわたしにとって、この本に収められているゾルゲの文章は衝撃でした。

 ドイツの新聞社の東京特派員として日本にやって来たゾルゲ、彼は日本についての資料を集め、日本はどんな国であるのかを研究しています。ソ連のスパイであったということで彼は逮捕され、最終的に死刑となったのです。でも、この本を読んでいて感じたのは、彼が行ったのは日本の現状をつぶさに調べ、そこから考察できることをレポートにしただけではないかと思えるのです。

 「東京における軍隊の叛乱」では、二・二六事件の現場を取材し、その時に起きたこと、自分の目で見たことをまとめています。「日本の農業問題」では、日本政府の農業従事者に対する冷遇を明らかにしています。獄中で書いた「日本における私の調査」の中で、「わたしが逮捕されたとき、家には800冊から1000冊の本があった。」というのには驚きました。

 その中には、その当時の本だけではなく、古事記や万葉集も含まれているのです。彼は本気で日本を知ろうとしていたのです。そして、日本がこのまま進んでいくだろう未来を憂いているところに、彼の誠実さを感じます。

 

「もし私が平和な社会状態と、平和な政治的環境のもとに生きていたとしたら、たぶん私は学者になっていただろう 少なくとも諜報員になっていなかったことだけは確かである」

 彼が残したこの言葉を読んで、とても悲しい気持ちになりました。確かにそれはスパイ行為だったかもしれないけれど、その内容は、日本の本当の姿を伝えただけじゃないかと思うからです。

 

地方の諸県からしばしば農民たちがマッチの使用をやめ、昔ながらの燧石(ひうちいし)を使うようになったと伝えている。もっと多く報告されている事実は、電気料金は現金で支払わなければならないため、農民たちは電気の使用をやめたという事である。こういう例はいくらでも上げることができるが、決してこの例は特に苦悩の重い東北地方の各地からとったものではない。これらの県の資料は特に陰惨を極めているので、おそらく例外的な状態の性格を示すものであろう。(日本の農業問題 P75)

 

日本軍部が演じている独自の役割、すなわち特に陸軍が、農業問題の重要さを認識しているばかりでなく、たとえ完全な解決でなくとも、それにしてもこの問題を実際に取り上げなければならぬ必要性と、少なくとも理論上の可能性を見ている唯一のグループであることは、この国特有のことである。日本将校団の約40%は農村出身者であり、日本兵士の少なくとも90%は農民の子弟である。(日本の農業問題 P82)

 

日本経済の特に重要な弱点は、国内資源の貧弱なことである。

日本は1933年ないし34年において65種類の工業用原料中9種類は充分に、また17種類はやや良く調達できた。他のすべては輸入に依存していた。

しかし日本は外国に大きな投下資本もなく、また国家的な理由から長期の外国信用をも重視せず、また巨額の海外為替や金の保有もなかったので、その死活に関する重要な輸入はできるだけこれに見合う輸出で賄わなければならない。

世界戦争の年まで、いつも交際収支は赤字だったが、大体日本の金の生産と、いろいろの貿易外黒字で相殺されてたものである。しかし急速な軍備拡張と新建国の満州国の商品および資本需要でこのこの均衡は破れてしまった。(日中戦争中の日本経済 P95)

 

日本の強力な拡張の主要な集中はここ数年間は中国に集中され、中国に拘束されるであろう。そしてせいぜいウラジオストック、香港、北部仏印あるいはシャムくらいまで勢力を伸展できるにすぎないであろう。

日本の「植民政策」は南洋と台湾の一部でみられるにすぎない。中国はあまりにも人口が多くまた文化的に日本と同程度なので、日本は大陸に植民帝国を作ることはできない。日本の膨張は大陸の形式的に「独立した地域」を軍事、経済、政治の各方面にわたって支配することを目的としている。日本は侵略者であるが決して植民者ではないのである。(「地政学雑誌」1939年8月号)

 

 日本がこんな国であるという事を、日本を動かしていた人たちは分かっていなかったのでしょうか。それとも、隠そうとしていたのでしょうか。いやそうではない、分かろうとしていなかったのだと、わたしは思います。外国人であるゾルゲにその真実を目の前に突きつけたから、憤慨し、彼を逮捕し、死刑にしたのではないかと思うのです。

 彼が書いた日本の体質、「都合の悪いことは国民に見せないことにしよう」、「貧しい労働者の権利など顧みない」「指導者たちの愚かさ」などは、今日も余りにも同じで寒気がしてきたのです。

4001冊目(今年242冊目)

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