『最後の皇帝と謎解きを』 犬丸幸平 26-228-3987
1920年の中国、北京、絵師の一條剛は、紫禁城の主である愛新覚羅溥儀(あいしんかくらふぎ)の水墨画の先生として雇われました。しかし、本当の役目は別にありました。城の中にある水墨画の贋作を作りすり替え、真作を売って資金を作り、清朝復興のための資金を調達しようという計画だったのです。
溥儀は紫禁城の中で絶大な権力を持っているとはいえ、まだ15歳、親は亡くなり、弟は遠くで暮らし、孤独な毎日を送っていました。どんなことを言おうと、部下の宦官たちは絶対服従ですが、剛だけは「それは違います」という所を気に入ったようで、孫犬(すんふぁん)という呼び名まで与え、溥儀は剛と友情のようなものを感じるようになっていきます。
城内で不審死があり、知恵を絞り犯人を見つけた剛は少しずつ、城内での立場が少しは良くなっていきますが、外国人である彼が、すべての人から信頼されるというわけにはいきません。
宦官といえば、高校の世界史の教師が言っていた、「奴らは切り落とされた自分の一物(宝 ぱお)を小さな壺に入れて大事に保管していた」「女みたいに高い声になった」という話を思い出しました。この物語の中でも説明されていますが、貧しい家の男子が宮仕えをするために生殖器を切り落としたという事がかなりあったそうです。お金のない家では親が切ったそうで、かなりの確率で死ぬことがあったそうです。
宦官が死んでお棺にはいる時、大事にしてきた宝も一緒に埋葬しました。そうしないと、生まれ変わった時にロバになると信じられていたそうです。生きている間は、常に男でもなく女でもないと言われ、排尿するための機関を失っているので、常に尿漏れ状態で、くさいと蔑まれたりもして、家族を養うためにそこまでしなければいけなかった彼らの人生は、切ないです。
第一章 傍若無人の廃帝(ぼうじゃくぶじんのはいてい)
第二章 画竜点睛を願う者(がりゅうてんせいをねがうもの)
第三章 青天白日の二人(せいてんはくじつのふたり)
第四章 狡兎三窟の訓え(こうとさんくつのおしえ)
各章の間に書かれている「溥儀の日記」には、溥儀の孤独と、剛という友人を得た喜びが書かれています。「清朝復興」のシンボルとされ、いつか皇帝へと期待されていた彼には、外へ出る自由さえなかったのです。だからこそ、ウソをついて外で出かけたあの日は、彼にとってかけがえのない思い出になったのでしょう。
映画「ラストエンペラー」で3歳の溥儀が紫禁城内を走るシーンを思い出しました。あの時から、彼は外の世界で生きることを許されなくなったのですね。
それにしても、ラストの怒涛の展開はショックでした。その後の愛新覚羅溥儀の運命を考えれば、そういうこともあっただろうと理解はできますが、やっぱりツラい、ツラすぎる。
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