『推し、燃ゆ』 宇佐見りん 26-215-3974
「推し」という言葉が一般的になったのは、この作品がキッカケじゃないかと思う。それ以前は、歌手とか俳優とかアイドルとかを追っかける人のことを「追っかけ」と呼んでた。
わたしの友達にもそういう人が何人もいる。あるグループがミュージカルで全国ツアーをすると、それを全部観に行くという同僚がいた。会場前で並んだ順で整理券をもらえるのだけど、ずっと並んでいるのは大変だから、同じようなことをしている人たちでノートをつけて管理してるんだって言ってた。
ある歌手が今は無き新宿コマ劇場の1ヶ月公演の座長になった時、1か月間毎日通ったという友達もいる。夜は全部見たけど、昼は歌謡ショーの部分だけねって、それにしても凄い。
「推し活」をしていると、正社員だとスケジュール調整ができないから派遣で働いているもいるし、看護師さんで「推し」のスケジュールに合わせて夜勤のシフトを入れてるという人もいる。
「推し」が生活の中心になってしまっているから、他のことはどうでもよくなるというのは仕方ないんだろう。でも、親や学校の先生はそうは思わない。「やるべきことをやってから、好きなことをしなさい」って言われるけど、やるべきことって何なの?わたしにとってやるべきことは「推し活」なんだよって気持ちは伝わらない。
そもそも何かにハマってる人に「ほどほど」なんてないんだから。
この主人公が、推しにそこまでハマったのは、親にとっては「よくわからないこと」なんだろうけど、この子にとっては「家庭内の疎外感」なのだということがヒシヒシと伝わって来る。誰かに大事にされていない自分だから、「推し」を大事にしたい。
「推し」のことをしょうもない男だと分かっているけど、「バカな子ほどかわいい」という想いになってしまってる高校生のこの子、「オレオレ詐欺」に引っかかる人と同じ心理なんだね。
お父さんが転勤になったとき、お母さんに「ついていくな」と言ったおばあちゃん。それをずっと恨んでるお母さん。それを見ていた主人公。自分が大事にされてないって思いがそっくり引き継がれていて、これが日本の女たちの縮図なのかなぁ。
3974冊目(今年215冊目)
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