『ペコロスの母に会いに行く』 岡野雄一 26-254-4013
認知症って、不思議よねぇ。今のことはすぐに忘れちゃうのに、昔のことはよーく覚えてる。50年前でも、80年前でも、細かいことまで覚えてる。つらいことや悲しいこともあったし、楽しいこともあったし、ずっと思い出したことなんかなかったことだって、突然思い出すの。
雄一さんのお母さんのミツエさんは、認知症と脳梗塞で施設に入りました。生きていたころはお酒を飲んで、さんざ迷惑を掛けられた旦那さんが、時々訪ねてくるのだと言います。そして、あの人が訪ねてくるのが楽しみだって言うんです。苦労したことは忘れちゃったのかなぁ。数年前に亡くなったお友達も、おしゃべりしにくるんですって。
目の前にいる息子の雄一さんの名前が出てこなくて、いろんな人の名前を言うんだけど、どれも外れで、でも雄一さんの剥げた頭をペチペチ叩くのが大好きです。雄一さんの頭はペコロス(小さなたまねぎ)に似ているので、こう名づけたんですって。
給料日に、給料を全部飲んじゃったとか、給料袋をポケットに入れたまま海に落ちたとか、先輩に給料を全額貸してしまったとか、雄一さんのお父さんは、大変な人だったそうです。給料日は危険な日なので、お父さんを迎えに行けと、お母さんから雄一さんは何度も言われました。子どもがいれば、少しは理性が働くだろうってね。子ども連れでも、飲みに行っちゃう、だけど、いつもよりは早く帰って来る。その程度だけど(笑)
わたしの知り合いで、普段は真面目なんだけど酒乱の人がいて、奥さんは飲みに行く旦那さんに子どもを連れて行かせてたんだけど、飲み始めたらそんなこと忘れちゃう。ペコロスの父とおんなじ。
認知症ってなり始めのころは本人もそれがわかるから、とっても怖いらしいの。「わたしは、どうなってしまうんだろう?」って思うんだって。わたしのは母はそう言ってた。でも、ある程度症状が進んじゃうと、昔と今がゴチャゴチャになっちゃって、脳内でタイムスリップしている感じみたい。でも、そういうこともすぐに忘れちゃうから、気にならなくなるみたい。
誰かに会ったとかって話をしていても、その相手がとっくに亡くなってしまってる人だったりするのね。聞いている方はビックリしちゃう。
自分の子どもの名前や顔だって忘れちゃう。今はオッサンになっている雄一さんのことはわからなくなっていても、背中に負ぶっていた「ゆういち」のことは覚えてるの。
子どもが大人になっていって、老人になって、最終的にはまた赤ちゃんに戻るのかもしれないなぁ。
車椅子のおばあちゃんとベビーカーのあかちゃんがすれ違う絵を見て、そんなことを思いました。
4013冊目(今年254冊目)
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