『AI脳クライシス』 酒井邦嘉 26-251-4010
言語脳科学の第一人者である著者が、羽生善治(将棋棋士)、ピーター・バラカン(ブロードキャスター)、千住博(日本画家)、柳田邦男(ノンフィクション作家)とAIの問題点について語り合っています。日本ではAIがさも素晴らしいものであるかのように評価されていますが、海外では、子どもたちや若者がAIによって、偏った考え方をするようになったり、対人関係に問題を起こしていることを危惧し始めています。
イギリスのケンブリッジ大学は、いち早く「生成AIの使用は剽窃(ひょうせつ)とみなす」という声明を出して、使用禁止を打ち出しました。そもそも自らが書いた文章でないものを自分の成果物として提出するのですから、盗作や剽窃と等しいことは明らかです。しかし日本の各大学は、残念ながら生成AIの使用を奨励する声明を出し続けています。P17
生成AIは「イエスマン」としてふるまうようにデザインされているため、格好の話し相手になりやすいのですが、それが手放せなくなって依存してしまうと、もはや家族や同僚からの時には厳しい意見に対して、一切耳を貸さなくなってしまう恐れがあります。「生成AIだけがわたしを理解してくれている」と錯覚して妄想が膨らんで行ったら、カウンセラーの介入も受け付けなくなるでしょう。P20
5月に、酒を飲んで暴力をふるった父親に対してどうすればいいのかを、娘が ChatGPT(チャッピー)に相談し、結果、父親が逮捕されたという事件がありました。この本を読んでいて、あの事件のことを何度も思い出しました。高校生の彼女は18歳の成人です。自宅にいて、そばに妹と母親もいて、それでもチャッピーに頼ったんですよね。そして、言われたとおりに行動してしまいました。
想像以上に大きな話になってしまった事件でしたが、こういうことが、これからはたくさん起きるのだろうなと気がついた人はどれだけいたのでしょうか。
多くの人が誤解しているようですが、AIや機械が「考える」ことなど決してありません。P11
「邪魔ものは消せ」というのは実にデジタル的な発想ですね。デジタルが我々に与える最も大きな危険性は、いつでも嫌なものをクリック一つで消せるということでしょう。
それは排他的な傾向を助長しますね。「自国ファースト」の風潮も根は同じかもしれません。P138
何かの相談をした時、相手が人間だったら、それをやったら誰かを不快にするとか、危険なことかもしれないとダメ出しもしてくれますけど、AIはそんなことはしません。生成AIはイエスマンで、指示を出した人が気持ちよく感じる答えしか出さないから、それに慣らされてしまった人は、「わたしの気分を悪くさせる奴はみんな敵だ」と考えるようになるかもしれません。
バラカンさんとの対話の中であった、「3者での対話が面白いものを生み出す」というのが興味深かったです。2者、4者だと対決姿勢になってしまうこともあるし、もっと大勢の場合は意思疎通に時間がかかる。3者というバランスがいいというのは、YMOにも通じていたようです。
AIと人間という2者だけの対話は、一見上手くいっているように見えて、かなり偏ったものになってしまう可能性を秘めています。「岡目八目」とか、「三人寄れば文殊の知恵」というのは、なかなか含蓄のある言葉だったのですね。
AIをやみくもに素晴らしいと思うことの危うさを知るには、やっぱり「2001年宇宙の旅」かなぁ?
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